鉄道技術標準化調査検討会 標準化活動表彰

 鉄道技術標準化調査検討会では、鉄道分野における国際標準化及び国内標準化活動に対して顕著な業績を挙げた者を称え、表彰し、以って受賞者の更なる支援と関係者による標準化活動の重要性認識の増進を目的として、平成19年度より「標準化活動表彰」を実施しています。
令和5年度からは、顕著な業績を挙げた方に贈られる「標準化活動貢献者表彰」、今後の継続的な活躍を期待する方に贈られる「標準化活動奨励者表彰」に加え、新たに他の模範となる優良な取組みを行ったと認められる組織に贈られる「標準化活動組織表彰」を設け、表彰制度を充実させています。
 受賞者は以下の通りです。
令和5年度 標準化活動貢献者表彰 受賞者   (50音順)
受賞者 所属 受賞理由
飯田 隆幸 氏 東日本旅客鉄道株式会社 IEC/TC 9/MT 62888(車上エネルギー測定)において国際エキスパートを務め、IEC 62888 シリーズの改訂作業において、国内の測定方法が将来的に阻害されないようにすることに貢献した。
また、IEC/TC 9/PT 63341-1(鉄道車両用燃料電池)においても国際エキスパートや国内作業部会の委員を務め、国内初の水素ハイブリッド電車の研究開発に従事した経験を活かし、日本にとって不利益にならず、かつ日本の技術を反映させた規格とすることに貢献した。
池田 浩司 氏 東日本旅客鉄道株式会社 IEC/TC 9/PT 62590-3-1(交流電力補償装置)において、交流電力補償装置の規格原案作成や国際会議での他国エキスパートとの交渉に尽力し、日本提案の国際規格の開発に貢献した。
また、IEC/TC9/PT 62848-3(直流避雷器・電圧制限装置)、IEC/TC 9/AHG 27(中立セクション)、IEC/TC 9/PT 63190(銅ちょう架線)、IEC/TC 9/MT 60913(架空電車線路)等に関わる多数の規格審議の国際エキスパートも務め、日本の鉄道技術の国際標準化に貢献した。
川之上 俊博 氏 西日本旅客鉄道株式会社 長年にわたり、ISO/TC 269/SC 3/WG2(運転シミュレータ)の国際セクレタリや国内作業部会の事務局を務め、日本が主導する ISO 23019(運転士訓練用運転シミュレータ)の規格発行に貢献した。
また、ISO/TC 269/SC 3/WG3(輸送計画)においても、国際セクレタリや国内作業部会の事務局を務め、日本の考え方に基づいた ISO 24675-1(運転時分計算:要求事項)の規格発行にあたり中心的な役割を果たし、日本の鉄道技術の国際標準化に貢献した。
出口 直樹 氏 株式会社日立製作所 長年にわたり、ISO/TC 269/WG5(RQMS:鉄道品質マネジメントシステム)の国際エキスパートを務め、様々な形態の組織でも本規格が活用可能となる様に主張し、国内メーカーへの不利益回避に貢献した。
また、IEC/TC 9/AHG20(情報セキュリティ Guide120 を受けた調査活動)、IEC/TC 9/PT 63452(サイバーセキュリティ)においても国際エキスパートを務め、国際市場性確保等の主張を行うとともに、国内においても IEC 全体におけるセキュリティに関する取組等を情報共有し、日本の鉄道業界においてサイバーセキュリティ意識の向上に貢献した。
西岡 進夫 氏 東日本旅客鉄道株式会社 ISO/TC 204/WG 8(公共交通)において国際エキスパートを務め、ISO 24014-1 の改訂においてサーバー管理型のチケットについて、日本のサービスに影響を与えない内容とすることに貢献した。
また、NFC(近距離無線通信) Forum において contributor を務め、今後の NFC タグ認証の仕組みの国際規格化において、日本の認証方式が国際標準のベースになる可能性を高めることに貢献した。
芳賀 昭弘 氏 公益財団法人鉄道総合技術研究所 長年にわたり、車両分野全般に関わる国際エキスパートとして、規格審議および策定に貢献した。ISO/TC 269/AHG 7(マイグレーション戦略)メンバーとして日本の意見を主張し、適切な運営に導くことに貢献するとともに、ISO/TC 269/SC2/WG 7(脱線検知装置)、IEC/TC 9/MT61373(振動衝撃試験)、ISO/TC 269/SC2/WG 4(車両のリサイクル性及び回収性)、IEC/TC 9/MT 61133(営業投入前の完成車両の試験方法)等、多数の規格審議の場に国際エキスパートとして参加し、日本の鉄道技術の国際標準化に貢献した。
横山 信行 氏 東日本旅客鉄道株式会社
(出向:公益財団法人鉄道総合技術研究所)
ISO/TC 269/WG 5(RQMS:鉄道品質マネジメントシステム)において国際エキスパートを務め、鉄道業界全体に影響を及ぼすと予想される課題の検討に積極的に参画し、ISO 22163(鉄道品質マネジメントシステム)に日本の事情を反映させることに貢献した。
また、IEC/TC 9/MT62888(車上エネルギー測定)において国際エキスパートを務め、国内の専門家の意見の取りまとめや、国際会議での他国エキスパートとの交渉に尽力し、IEC62888 シリーズの改訂に大きく貢献した。
令和5年度 標準化活動組織表彰 受賞組織   (50音順)
受賞組織
所属
受賞理由
一般社団法人欧州構造接着エンジニアリング協会 鉄道産業向けに発行された接着接合の品質保持規格である DIN 6701 等に基づく接着接合要員の資格取得に関するサポートを開始した。日本の鉄道関連会社に対して、2016 年度からほぼ毎年トレーニングを実施しており、本トレーニングを受講した会社が欧州の鉄道業界向けに製品を輸出するなど、日本の鉄道製品の輸出に貢献した。
一般社団法人国際高速鉄道協会 国内外の政府や議会の関係者、鉄道関係者、有識者、研究者、報道関係者等を集めた国際会議を開催し、国際情勢の展望、関係国・地域の成長戦略と高速鉄道の位置づけや、高速鉄道導入による社会変革、高速鉄道の状況・課題・展望などについて、グローバルな視点から広く議論や情報共有を行うなど、日本型の高速鉄道システムである「新幹線システム」の優れた特徴の 普及に貢献した。
また、同協会ウェブサイトにおいて、「新幹線システム」の概要・便益、新幹線に関連する詳細データ等を日本語・英語で開示するなど、「新幹線システム」に関する一般の方の理解を促進することに貢献した。
公益財団法人鉄道総合技術研究所
鉄道国際規格センター
人材育成ワーキンググループ
鉄道分野における国際標準化活動を戦略的に進めるために必要な情報を提供するセミナーを新規に企画・開催し、国際標準化活動に関する専門的な知識や戦略的に進めるための情報を提供することに貢献した。
また、IEC・ISO 等における過去の審議の経験や教訓等を題材として、鉄道分野に特化した自主教材を新規に作成し、グループワークに取り組むなど、鉄道分野の標準化人材の育成に貢献した。
東日本旅客鉄道株式会社
国際事業本部 標準化戦略・推進部門
鉄道ビジネス英語ナレッジ共有プロジェクト
海外ビジネスにシステマティックに対応できる人材育成のため、社員がそれぞれ蓄積してきた知識やノウハウを言語化・明文化した「現場で役立つ 鉄道ビジネス英語」を広く一般に公開することで日本の鉄道技術を海外展開することに貢献した。
また、本書に異文化コミュニケーションの要素を付加した一般向けセミナーを開催するなど、人材育成を通じた標準化活動の効果的な推進及び日本のプレゼンスの向上に貢献した。
RAMS規格改訂作業部会 改訂版 RAMS 規格を作成するにあたり、そのベースとなる EN 50126 において不足していた RAM 面の事項を、改訂版 IEC 62278 に反映するため、IEC 国際規格審議の場で積極的に関与した。その結果、日本提案である IEC TR 62278-4 に定める事項(特に品質面)を改訂版の国際規格に反映するなど、日本の鉄道の品質の良さをグローバルにアピールする一手段として、RAMS 規格を再構築することに貢献した。
RQMS規格解説書WG RQMS 規格の解釈の幅の広さと難解さを解決するため、RQMS 規格の内容を分析した結果を文書化し公開することにより、RQMS 規格認証取得のハードルを下げ、普及の促進に貢献した。
ISO: International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略。電気・電子分野以外の国際規格を策定している。
ISO/TC 269: Technical Committee 269の略。ISOの鉄道分野に関する専門委員会。
IEC: International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)の略。電気・電子分野の国際規格を策定している。
IEC/TC 9: Technical Committee 9の略。IECの鉄道用電気設備とシステムに関する専門委員会。
WG: ワーキンググループの略。
PT: プロジェクトチームの略。
MT: メンテナンスチームの略。
TR: Technical Reportの略。
RAMS: Reliability(信頼性)、Availability(可用性)、Maintenability(保守性)、Safety(安全性)の頭文字を合わせた造語。
RQMS: Railway Quality Management Systemの略。
国土交通省ホームページの報道・広報  https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo06_hh_000123.html